和魂と荒魂      


 その小さな店の前で祐樹は立っていた。

(あの女がここにいる)

 表情は険しく、まるで世の怒りを一身にとどめてきたかのようである。

 20数年前、祐樹が6才の頃だった。

 父親を早く亡くした祐樹にとって母は何より大切な存在だった。

 その日いつものように母に連れられて、公園でかくれんぼをしていた。

『もう〜いい〜かい』

 祐樹は急いでベンチの影に隠れて答えた。

『もう〜い〜よ』

 自分では上手く隠れたつもりだったが、あっというまに見つかった。

『祐ちゃん見つけた、はい、次は祐ちゃんが鬼になる番よ』

『ちぇっ、よ〜し、じゃあ、すぐ見つけてやる』

 祐樹は不満気に言うと目をつぶった。

『もう〜い〜いかい』

 母の足音が地面に響いた。

『まぁ〜だだよ』

 足音が少しずつ遠くなっていく

『もう〜い〜いかい』

『まぁ〜だだよ』

 今度はだいぶ離れたところから聞こえた。

『もう〜い〜いかい』

『…もう〜いいよ』

 祐樹は顔を上げて声がした方に走った。

 けれど、どれだけ時間が過ぎても母の姿は見つからなかった。

『グスン、どこに隠れたの〜ママぁ?』

 公園に残されたのは祐樹と、半ズボンのポケットに入っていた紙きれだけだった。

「この子をよろしくお願いします」


 祐樹は荒れた。

 その後、孤児院に引き取られたが、母への憎悪は大人になった今日まで消えることはなかった。

 ようやく最近になって母がこのラーメン屋にいることを突き止めたのだ。

『あの日、あんたは言ったよな、今度は俺が鬼だって』

 祐樹は店の戸に手をかけ引いた。

『そうさ、俺は鬼だ、鬼になってあんたを…』

 狭く汚い店内には一人の中年女が慌ただしく動いていた。

(間違いない、あの女だ)

 祐樹は見覚えある姿を認め詰め寄った。

 頭髪に白いものが何本も混じっている、祐樹に気づいた顔には幾つもの、しわが刻まれていた。

『いらっしゃいま…』

 母の目が大きく見開かれ、そのまま直立不動となった。

(こんなに、小さかったっけ‥)

 祐樹の記憶では、いつも母は笑って輝いていた。

 だが目の前にいる母はひどく小さく、疲れた姿をしていた。

『か、母さん‥見つけた』

 あれだけ憎んでいた、あれだけ荒れていた気持ちは、どこかに消えていた。

『ゆ、祐樹なのかい?』

 涙を浮かべた母を祐樹はうなずき抱き締めた。

 こうして荒れた心は和やかな心へと変わっていったのだった。




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