ある夜、私は夢の中にいた。 見知らぬ道を歩いている、私以外にもたくさん人が歩いていた。 私はこの夢が自分のものだという確信があった。 いつもの日常と違う世界、まるでなにかの物語の主人公みたいだと思った。 だから私は道を歩きながら、通りすがりの女性に『これは私の夢なのよ』と教えてあげた。 女性は僅かに顔をしかめて、唇の両端を持ち上げニコリと笑った。 私はやっぱり自分の夢だと再認識して胸を張った。 それから私は道すがら沢山の人に、同じように言って回った。 皆が一様に笑った。 ニコニコ、クスクス、ニヤニヤ、ウフフフフ… いつのまにか私を中心に円を描くように、人が沢山集まってきていた。 男性も女性も老人も子供も、皆が同じ視線を私に投げてくる。 顔に笑みを浮かべ、首を少しかしげて、立ち止まって私を見ていた。 そして全員が一斉に、ゆっくり首を振った。 『これはオマエの夢じゃない』 ひざが笑って立っていられない。 小刻みに体が震え、私は自分で自分の肩を抱き締めた。 『これは私の夢よ、なんでそんなこと言うの、これは私の夢なの』 私はうずくまりながら、声を振り絞った。 でも私を取り囲む輪が狭くなるにつれて、さっきまで確信していた気持ちが霧散していった。 これは私の夢なの? それを信じてるのは私だけなの? 私しか信じるしかないものを私は信じるの? 『これはオマエの夢じゃない』 もう一度、皆が声を揃えて言った。 私は唐突に理解した、光が頭上に刺さり、首を縦に振る。 これは私の夢じゃない この物語の主人公は私かもしれないけど、これを夢想したのは違う人。 そして、この夢は今、そうゆう格好で読んでいる、あなたの夢になっている。 そう、これを読んでいるあなたの夢に。 |
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